2024年から2025年の年末年始にかけて日本へ一時帰国した際、ずっと気になっていたルラボの店舗を訪問することができた。

ちょうど旅行で京都を訪れていたため、旅先で一人抜け、京都に2つあるルラボ店舗のうち、その時いた場所から近い新風館の店舗へ向かった。京都限定の『キンモクセイ』も、もちろんお目当てである。

訪れたのは12月下旬、平日のお昼ごろ。新風館はレンガ造りの建物で、中央が吹き抜けになっており、植物が自然に溶け込んでいてとてもおしゃれな雰囲気だった。

 

 

ルラボの店の前には5人ほどの列ができていた。そして、少し離れた階段のところにさらに10人ほどが並んでいる。どうやら、そちらが列の最後尾らしい。階段の最前列には従業員が1人いて、列を整理しながら新しく来た人に当日の注意事項を伝えていた。内容はうろ覚えだが、何かの商品が売り切れとのことだった。こういった情報を事前に教えてくれるのはありがたい。

先に言ったように、店の前に5人ほど並んでいる最後尾は、本当の最後尾ではない。しかし、表示も何もないため、新しい客が来ると、そのままそこに並んでしまうことが何度もあった。最後尾はこちらです、などのプラカードを置けば済む話だろうに、そういった部分に疑問を感じた。日本に一時帰国すると、こうした案内の不明瞭さが目につくことがある。

そして、私は階段の列からやっと店前の列の最後尾に来たとき、たまたまその場にいた従業員から「階段の方に並んでましたか?」と確認された。「並びましたよ」と答えたが、「従業員同士でもっとしっかりコミュニケーションを取ってほしい」と思わずにはいられなかった。

店内には常時2〜3組しか入れないようで、1組が退店すると新しい1組が入る仕組みになっていた。

 

 

30分ほど並び、ようやく入店。一番手前にはずらりと並んだ香水のテスターと、その後ろに説明する従業員が立っていた。ここで気になる香りを試しながら相談ができる。

ここでまず思ったのは、ここにはセルフで試せるテスターがなく、従業員が香りをプッシュして渡すスタイルであること。そのメリット・デメリットが頭をよぎった。

私はできれば一人で自由に香りを試したい、没頭したいのだ。そしてもし必要があれば質問したいタイプ。それに従業員とずっと会話していると、どうしても「買わなきゃいけないのでは」という気持ちになってしまう。

また、従業員側もずっと接客し続けるのは大変なのだろう。実際、私のときは特に詳しい説明や、香りの背景にある物語、こちらにインスピレーションを与えるようなお話は一切なく、ただ試したい香りを伝えると、従業員がテスターにプッシュして渡す。あとひとつ、他の香りをオススメされただけ。正直、それなら自分で試せた方が気楽だと感じた。

一方で、香りの管理が徹底される、香りが混ざりにくい、過剰にテスターを消費しない、特定の香りに集中できる、そして客に時間の制限のプレッシャーを静かにかける…といったメリットや思惑がルラボ側にはあるのだろう。

 

 

ここで思い出したのが、以前訪れたルラボのミラノ店。

ミラノの店舗は、大通りではなく、少し奥まった路地裏にあり、注意しないと見逃してしまいそうなほど目立たなかった。中に入ると、従業員が2人だけ、暇そうにおしゃべりしていた。客はひとりもいない。

ルラボの香水は、イタリアの物価に対してかなり高価であり、それが客の少ない理由の一つだろう。これは私が住むドイツでも同じで、特にドイツはアメリカ製品に高い関税をかけているため、ルラボの香水はさらに高価になる。それにヨーロッパでは、日本で人気のある高価格帯の香水(例えばバイレードやディプティックなど)がそこまで普及していない。

ミラノ店では、自由にテスターを試すことができた。「何かあったら聞いてね」と一声かけてくれるだけの接客が、私には心地よかった。

そこで偶然試した『テノアール29』がとても気に入ったものの、旅行中に再訪できず、それ以来ずっとお預け状態だった。

 

 

…と、そんな話はさておき、私は京都の店舗で最終的に3種類選んだのだが、ちゃんと自分が納得いくまで試してせているのは、テノアールだけ。他の2種類はその場の紙テスターと手首で試して、正体もわからぬまま買ってしまった。というのも、なかなかお店に行けないというプレッシャーからだ。

個人的に、香水は、買う前に肌に乗せて一日経ってから決めたい。紙のテスターや、その場で肌に乗せた香りだけで決めたくない。ルラボ新風館ではそれがしにくいのが残念だった。何度もお店に足を運べる人や、時間のある人じゃないと、ここでちゃんとした決断をするのは難しいだろう。

決めた香りを伝えると、従業員が小さなボードを取り出し、そこに香水やボディローションの種類、容量、価格がかなり小さい字で書かれていた。

「これ、老眼の人には厳しくない?」と思いつつ、希望のアイテムを伝えると、今度はラベルに入れる文字や記号を指定するための用紙が渡された。

正直どうでもいいと思いながら、適当に選んだ記号をいくつか記入した。こういう部分に価値を感じるのは、アジア人の繊細な感性ならではだと思う。(実際、私がいた時の他のお客さんは全員アジア人だった)

記入を終えた後は、お会計の列に並ぶ。免税手続きをしたため、通常の購入よりも時間がかかったが、店内の客の半分ほどは外国人観光客だったので、私だけが時間をかけているわけではないだろう。そこまで気まずさは感じなかった。

会計を終えると、レシートを受け取り、「2時間後以降に受け取りに来てください」と案内された。そして、店を出たのは並び始めてから約1時間後だった。

 

 

不思議な店だと思った。店を出て、ぽかんと今あった出来事を思い浮かべながら、もう一度振り返る。

その独自のブランディング、マーケティング手法を目の当たりにし、「相当な売り上げをあげているのだろうなぁ」と、思わずにはいられなかった。

実際に香水を試したり相談したりしていた時間は5分にも満たない。それ以外の55分は、香水以外のための時間だった。入店待ち、用紙の記入、会計待ちの列に並ぶ時間…。

これが通常より短かったのか、それとも長かったのかはわからないが、貴重な体験だったのは間違いない。

 

 

ちなみに、その後東京の代官山店にも行ってみた。12月31日の年の瀬の午前中、タイミングが良かったのか、店はかなり空いていた。もちろん並ばずに入ることができ、テスターのカウンターも自分で自由に試していい雰囲気があった。

そのうち従業員がそっと私の横につき、色んな説明をしながらいくつかの香りを紹介してくれた。

京都では試さなかった香りや、東京限定の香りを手首に乗せ、「今日一日様子を見て、気になったらまた来ますね。」と伝えて店を後にした。私が本当にしたいお試しはこのスタイルである。

京都店に比べると圧倒的に居心地が良かったのが印象に残っている。

 

▼一緒にオマケでついていたサンプルは『サンタル33』で、お店側のチョイスである。極小0.75mlで、スプレータイプではない。本当に、ただ香りを試すだけのものだ。

 

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Kapibara

ZARAはないけど香水屋はいっぱいある、ドイツの田舎町在住の香水オタク。万人受けより自分受け。気になった香水をレビューしていきます。

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2件のコメント

  1. こんばんは!日本に里帰りお疲れ様でした。
    なんかモヤる。。高級店たから客側が察しろという感じかな。
    リピーターばかりが来るお店じゃないんだから、そこはきちんと店員が案内しなきゃですよね。

    名古屋でも自分で試せれないお店が殆どだけど1人店員がつきっきりで圧が凄い。
    高島屋のディップティックは店員さんの知識が高いので凄くスムーズな接客でした。ラシックのマルジェラの店員さんも凄く親切でした。
    中日ビルのモルトンブラウンは。。。アカン。こっちが聞いても虎の巻見ながら答えてるし、ピンクペッパーオードパルファムが入荷したら電話頂戴って2回も言いに行ったのに連絡ないし。
    そして5000円も値上がりしちゃうし。
    店員の態度と知識は本当に大切ですよね。

    1. きゃさりんさんこんばんは!
      高級店のわりに、従業員の香水に関する知識やセールスのクオリティはかなり差がある感じなのは”あるある”なんですね。
      すごく親切にしてもらったとか、いろんな話を聞けた、新しい発見があった、のであれば店まで赴いた価値もあるのですがね…。どれもなし!
      代官山店で新風館に行ったことを話すと、店員さんも混雑のことを知っていて「観光客の多さと今は限定のキンモクセイのダブルパンチで、相当混んでいると聞いてます‥」とおっしゃってました。代官山店の従業員さんはもうご自身がルラボの虎の巻と言った感じの知識量でしたよ。

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